08.X XS





 眼前に黒い煙が立ち込めている。

 眼前に転がるぐしゃぐしゃの…膨大な鉱物の山は、もはや原型を留めないほどに溶解した
スレイプニルのうちの一台だとグレンが了解するまでに、二三秒は要した。

 「怨霊砲かッ!しかし、もう奴らの数が半数を切ったわけではあるまい!ペイン殿!」

 グレンが気色ばんでペインに問う。

 「私にもわかりませんが…流れ弾でスレイプニルが一台やられたのは判っています!」

 ペインの返答は遅れて返ってきた。恐らく彼自身も敵と交戦中なのであろう。
グレンはかッと眼を見開いて左右に居並ぶスレイプニルを睥睨する。

 データ収集と支援砲撃、それに、魔装鎧退却ラインを確保するために
居並んだ支援車両を一撃でおもちゃの様に破壊する攻撃魔法の底知れなさにグレンは心を波立たせる。

 「敵の数は十分に減っていないが…切り込むしかあるまい…!」

 ダィンスレーRの後方に控えるザノンはぐびと固唾を飲んだ。支援車両の展開する防御フィールドは、
拠点防衛に使用される物と比肩する水準のものである。

 スレイプニルが多少その点に於いては劣ってはいるといっても
魔装鎧のものと比べれば比較にならない程に堅固なものである事は確かである。

 あの中には乗員は何人いたのだろうか?

 その人たちには家族がいて、生活があって…そして
なにより、夢があったはずだ。

 砕けた夢を、人生に傷を残す悲しみを、理不尽との戦いに散っていった者達の勇気を、ザノンは思った。

 ジェネレータの鳴動する音が自分の鼓動に混ざって高く自分の体の内に響く…。

 「クロウス・アーメイ!いるかーッ!」

 戦場にありながらその感覚に一瞬忘我となったザノンを、グレンの大音声が現世に連れ戻す、
グレンは良く通る声で続けざまに叫ぶ。

 「貴様の為の機体が、ここにある!突破してスレイプニルのところまで来い!」

 「クロウスですと!?」

 ペインが狼狽して、大声を上げる。
その声は、怒気を孕んでいた。

 「女王暗殺を謀った男が、どこにいると言うのです!懲役八百年を超える咎人の名に頼るとは、
グレン卿、気でも違われたか!」

 「黙っていろ、ペイン・オールトー!私は奴を呼んでいるのだッ!」

 しかし…ペインが言うようにグレンの声は気障りと聞き紛うほどに感情に取り付かれていることは、
誰が聞いても明らかだった。ザノンは事前にそれを知っていたとは言っても、突然暴露をして…
やはりいい事ではあるまい、と胸中をざらつかせた事は確かだった。

 「…ちッ、グレン、あのたわけときたら…」

 ぐい、と防塵マスクの位置を治して、デアブロウの胎内のエクスが呟く。
ご丁寧にこの辺り全域に流してくれた通信のおかげで、コヨーテはいざ知らず、盾の騎士団には
少なくない動揺がある、と彼には見えた。

 総勢三十機の内一機を先ほど失った盾の騎士団の魔装鎧部隊の中で動揺するものが有ればそれは、大打撃といえる。

 ましてその直前に、騎士団はスレイプニルを一台失っているのだ。

 こいつはちょっと骨だ、とエクスは肩を強張らせて、声を上げた。

 「騎士団の人がた!騎士団の事情なんぞどうでもいいが、さっさと前に出て手伝ってくれ!
おしゃべりしてる間におッ死んじまったら浮かばれねえぜ!」

 「貴様…ッ」

 尊大な態度のエクスの発言にグレンが反応した。
エクスは相手が続く言葉を発する前に己の名を言葉にする。

 「俺の名前はエクス・ノアだ!その俺がそんなじゃれ合いをしてる場合じゃないと言っているんだ!」

 隊長、とエクスの名を呼ぶ通信が入った。どうやらサムスの方であると知覚したエクスはセンサーを走らせる。
押し寄せる敵の波に流されて…クワィケンの小回りのよさが災いしたのか、やや離れている場所に、サムスのクワィケンが
孤立しているのがエクスにも視認できた。

 ライフルの発射頻度では間に合わないかもしれない、とエクスは舌打ちを発する。
ふざけるな!とグレンの怒声が遅れて届いた。
エクスは立て続けにライフルの引き金を絞る。

焦燥が悪魔を呼んだのか…
バキン、とライフルから嫌な音がしてエクスは背筋を凍らせる。

 大型ライフルの 排莢トラブルが起こって…デアブロウのライフルの薬莢が
排莢を完全に行えずに排莢部分、インジェクションポートに詰まったのだ。
まずい、とエクスが舌打ちを鳴らす。

 「サム、逃げろ!ライフルがいかれた!」

 「隊長!皆!このままじゃ押しつぶされて…」

 だんッ、と地を蹴ってデアブロウが高台から平地に飛び降りる。

 到底、行き着くことの出来ない距離であったろうが、エクスはそうしなければいられなかった。

 はるかな彼方に、サムスのクワィケンが
アサルトライフルを乱射する火花と…
それを飲み込んでいく小型ルサンチマンの影絵がエクスの眼に映る。

 「サムス…!」

 デアブロウを走らせながらエクスはその名をもう一度呼んだ。

 たすけて、とか細い声が聞こえて、クワィケンの機体はルサンチマンの影に完全に飲み込まれた。



 「ぃ"あ"──────ッ!!!」



 コクピットの歪むメリメリという耳障りな音に続いて聞こえた絶叫…
耳を灼くサムスの断末魔は、エクスの、ザノンの耳を貫く。

 エクスは下唇をきつく噛み、ザノンは無意識にアイギスに一歩を踏み出させていた。

「僕は…人が死ぬところをまた、見に来ただけだって…魔装鎧に乗っているくせに
何も出来ないって言うのか」

 ザノンが定まらぬ視点で虚ろに呟く。

 サムスからの一度きりの通信は、彼の耳にこびりついて、何度もエコーする。
自分のいる所に、人の死がついて廻る。そんな想像をザノンは打ち払おうと強く頭を振る。
だが、その想像は強く灼きつき、鳴り響き続けている。

 音は、やがて悪魔の声となってザノンの耳に幻聴を呼ぶ。

 (関係ない人が死んで、何故君の心は揺れるのだ?)

 ウヮアン、とアイギスのジェネレータとコンバータの音が混じって、頭の後ろで昇華される。

 (いるだけだ、ザノンは、そこに。いつでもなにもできやしない)

 ザノンは奥歯を噛み締める。砕けそうな程に強く噛み締めた奥歯がバキンと音を立てたのをザノンは己の骨で聞いた。

(思っても何も出来ない。いてもいなくても同じさ。なら、いなくなってしまえばいい)

 黙れ、とザノンはうわごとのように呟く。
夢でみたあの、自分自身のかおが彼の眼前に幻のように浮かぶ。

(勇ましい事を言うのは…逃げたいだけだろう?思い出からさぁ)

 「黙れよッ!」

 ザノンがコクピットの中で叫ぶと、幻のザノンは揺らめいて、消え。

 だが…その存在の気配は濃密にそこに漂い続けている。
当たり前だ。それは、彼自身の内から出た声なのだから。

 ダィンスレーのコクピットの中のグレンはそんなザノンの葛藤を尻目に、身を乗り出して叫び続ける。

 「クロウス!これでもその名前が、新しいカリバーン、エクスカリバーが必要だと思わんのか!
出てくるんだ!クロウス・アーメイッ!」

 アイギスは、言葉をまくし立てるグレンのダィンスレーRの方へもう一歩を踏み出す。

クロウス卿の名前、という過去の炎が現在いまを焼き始めている。

騎士団の錯綜する通信や、市内のものより重武装を施された魔装鎧が
動きに戸惑いを見せていて、幼いザノンの心にはそういう考えは芽生える。

 ──違う。何も出来ないでいるつもりは、ない。

 思い知らせてやる。世界に。

 僕が、人の盾となる為に魔装鎧の中にいるという事を!──

 「もう…クロウス卿の名前を出したのなら…」

 ザノンが、小さく、強い声でグレンだけに向けた通信を開く。

 「開き直るしか、ありません。クロウス卿から答えはない。
だったら、やり方は僕が作ります」

 グレンからの答えを待たずにザノンはアイギスのコンソールを叩く。

 「通信音声を加工。なんでもいい、とにかく声を低く…」

 強く、アイギスが地を蹴って、
ダィンスレーRとスレイプニルの頭上を飛び越えてその前面に出る。

 「騎士、クロウス・アーメイがエクスカリバーと共に盾の騎士団を助太刀に参った!
盾の騎士団の面々には、言いたい事の百や千もあろうが!」

 アイギスから、不自然に低い声になった通信が盾の騎士団、コヨーテ各機に送信される。
 「なんだと!?」

 エクスは狼狽して、
現在位置から捉えられない映像データをスレイプニルを中継して受信する。

 「たしかにカリバーンに瓜二つ!…しかし、よもや、グレンの奴、偽者をたてるとは…」

 困惑したエクスのデアブロウは、ライフルを投げ捨て、 腰部背面にマウントされた大口径ハンドガン二丁を各々両手に携える。

 「確かな事は、十聖槍の内の二本が今この戦場にあるという事だ!
偶像とやらに頼らせるのは気に入らんが…
ナイトガルドの槍と共に眼前の敵を討ち滅ぼしてから、文句を聞く耳は持とうッ!
…打開するぞッ!」

 チッ、とエクスはハンドガンの小型ジェネレータをチェックしながら舌打ちを鳴らした。

 「忌々しい事態だが、なかなか似た言い草じゃないか…
誰が乗っているんだ、エクスカリバーとやらは」

 更に前進しようとするザノンの前を塞ぐように、グレンのダィンスレーRが着地する。

 「…どういうつもりだ、ザノン君!」

 押し殺してはいるものの、グレンの声は明らかに怒気を孕んでいる。

 「クロウス卿は出てこないでいても…人は死ぬんです。
クロウス卿の名前のために動揺して死ぬ人が出てしまうなら、
その名前だけでも、人の勇気を奮い立たせる為に、借りようと思いました」

 ザノンが、やはり決意を秘めた強い声でグレンに告げる。

 「調子に乗るな!うっかり前に出て死にましたで済む機体ではないのだぞ!」

 グレンは、尖った声でザノンを大喝する。

 しかし、その彼をここにつれてきてしまったのは
グレン自身だという事を、グレンとて胸の内では理解している。

 「その機体がノーブルなら当てにするぜ、クロウス卿」

 唐突に、エクスから通信が入る。

 あッ、とザノンは声を発しかけたが、ぐ、と声を飲み込む。

 先ほどは判断がつかなかったが、この声は間違いなく自分の知っている人物であると。

 「…僕がクロウス・アーメイなら、貴方はゴールデンコヨーテのエクスさん、ですね」

 「飲み込みが早いな。その通りだが、言い回しには気をつけてもらおうか?」

 「…己ら…ッ!」

 エクスとザノンとの通信に口を差し挟んで、グレンが何事かいいさしたが、その言葉を遮ってエクスは言葉を紡ぐ。

 「どうやらお偉い騎士様もいらっしゃっているってえ話だ、
コヨーテ各員、討つぞ、サムスの仇どもを!コヨーテの首は高くつく、
首代を連中に払って頂こう!
いよいよ中型どもも
前に押し出されてきてるんだ、一体ずつ着実に潰せ!」

 ペインもエクスの言葉に続いて、盾の騎士団へと激を飛ばす。

 「大型への血路を開くぞ!ノーブルに乗るものは後れを取るな!
後れを取らば、恥じて墓に名も刻めぬ始末となり候!
フラ・ベルジャ部隊は中型には二体一組で当たれ!」

 ブツンと音をさせて、アイギスが太刀と刀の鯉口を同時に切ッた。

 グレンが何か言う前に、もうザノンのアイギスは得物を両手に構え地を蹴って、
空中に飛び上がると、はるか彼方に消えて行ってしまっている。

 「ええ…!なんたる事だ、
古の血統の騒ぐままに戦場に飛び込んでしまうなどと…」

 グレンも短時三次元戦闘モードを起動させると、ダィンスレーRを空中に浮上させる。

 「敵戦力総数…小型74、中型23、大型11…くそッ、だが…彼達がそう判断したように」

 少しでも歩を止めている時間は惜しい、とグレンは呟いてダィンスレーRを加速させる。
空中で、ダィンスレーRは腰部に搭載されたハンドガンと
双身剣と呼ぶべき、柄の上下に刀身を持つ柄物をその手に携えた。



 追加装甲を施し、大盾と剣を携えたフラ・ベルジャ二機が
ウォーリア・タイプのルサンチマン一体を前後から取り囲んで王手をかける。

 ウォーリア・タイプは先手を取られる前に
斜め前方に大きく跳躍して、四足のような姿勢で着地する。

 それに対応するように、横に廻りこまれる形となるフラ・ベルジャが盾を正面に構え、
剣を構えた椀部を前に突き出して、前腕部に取り付けたランチャーユニットから、光の高速弾を迸らせる。

 しかし、フラ・ベルジャは盾を構えた分、挙動に遅れが出た為にウォーリアはその予備行動を見て取られ、
ウォーリアは今度は大きく前に…
魔法、エナジーボルトを飛び越えるように跳躍した。

 空中からの直接攻撃を避けられないと見て取ったフラ・ベルジャは盾で防御する態勢を固め、
今度はウォーリアの背後のフラ・ベルジャが空中のルサンチマンにランチャーの狙いを定める。

 空中を迸った光の弾は、確かにウォーリアの右腕を捉え、肘から先、右前腕を吹き飛ばしたが、
落下するウォーリアは身体を痛みに揺さぶると反対側の手で盾ごと落下地点のフラ・ベルジャを殴りつける。

 グワァンと音をさせて大きくフラ・ベルジャの持つ大盾が凹む。

 凄まじい衝撃をなんとか耐え凌いだフラ・ベルジャは剣を前に突き出して
反撃に移ろうとするが全身をカバーする長さの盾から頭を出したところで、
思い切りウォーリアの左足に頭部を撃つ鋭い蹴りを貰って、
フラ・ベルジャの頭部はその衝撃に耐え切れずに空中にちぎれ飛んだ。

 ウォーリアの直接攻撃は、確認されている種の中型ルサンチマンの中でも強烈な部類に入る。

装甲に於いて追加装甲を施しているとはいえ、フラ・ベルジャは防御性能よりも
汎用性と軽量化、それに機動力にやや重きを置いた機体であるから、
脆い部位に攻撃を貰えば一撃でその部分が破壊されない方が不自然だ。

 ウォーリアは、構えを崩してよろめいたフラ・ベルジャの、
空中を泳いだ右椀部を掴んで強くに引くと、自分の背面まで振り回して、その腕をねじ上げる。

 体格においてフラ・ベルジャに優り、怪力のウォーリアであるからして、
ちょうど、フラ・ベルジャの身体は首無しでぶら下がるような格好にされる。

 ウォーリアの背部からランチャーユニットの狙いを定めていたフラ・ベルジャがたじろぐ。
味方を盾にされて、直線軌道の高速弾は放てない。

 ぼうッ、とウォーリアの胸の瘤が光る。眼前に吊るし上げたフラ・ベルジャと、
あわよくばその向こう側で愚かにも動きを止めたフラ・ベルジャを焼き払う魔法を放とうとしているのだ。

 まずい、とランチャーを構えたままのフラ・ベルジャのパイロットが
感じると同時に…、空中、ウォーリアの直上で、彼は何かが光るのを見た。

 何が起こったのか把握する前に、ウォーリアは痛みにその手を開いて、掴んだフラ・ベルジャを地に落としていた。

 見れば、ウォーリアの背後には白い魔装鎧が立ち…ウォーリアの腰部前面まで、
その魔装鎧の得物であろう剣の切っ先が貫いている。

 その魔装鎧は、他ならぬアイギスであった。

 上空から一気に急降下してきて、その勢いのままにウォーリアにその手の柄物で刺し貫いたのだ。

 「かぁッ!」

 ザノンの気合と共に太刀を捻るや否や、アイギスはウォーリアに深々と刺した太刀を思い切り外側に払い、
ウォーリアは腹部をざっくりと切り裂かれる。
同時にアイギスはもう一本の刀を今度は背面からウォーリアの胸の瘤を貫く格好で刀を突き立てる。

 痛みにウォーリアが、筋肉に覆われて塞がった…口にあたる部分を震わせて奇妙な叫び声を上げる。

 まず、身動きの取れなくなったウォーリアをアイギスは思い切り背後から突き放すように蹴り飛ばし…
突き刺した刀が抜けると、右手の太刀からまず一刀、敵の背中を背中右肩から袈裟斬りにかけ、
左手の刀も、同じように鮮やかな一刀で左肩から深々と敵を切り裂く。

 めった切りにしたウォーリアの血の通わぬ、肉の断面がビクビクと蠢動するのをザノンは見た。

 アイギスの両手の柄物のエッジが強く光りを放つ。

 「おのれらは血を流さないで、人に血を流させやってくるなどと…!」

 アイギスはザノンの呻きと共にその両手の刀を天にかざす様に振り上げた。
致命傷を負ったウォーリアが、前のめりに倒れるところを、アイギスの二刀は捉える。

 「僕は、逃げられない!…なら、お前たちが失せればいい!」

 両肩から思い切りアイギスの刀の一撃を受けたウォーリアの身体は
上から下へと綺麗に両断され、ウォーリアの体は三つに別れる。

 哀れ、一方的にアイギスの剣撃に晒され、分解されたウォーリアの右腕、左腕は地面に落ちて砂埃を巻き上げて…
ついで胴体も膝を折って倒れる。

 その、ズウンと鳴動する重い音を、フラ・ベルジャのパイロットたちは遠い世界の出来事の様に呆然と聞いていた。

 ウォーリアを背後からとは言え、やすやすと滅多切りにするその、
ノーブル・アーマーの立ち姿は神像のように彼らの目には神々しく映っていた。

 「クロウス卿…」

 「そうだ、クロウス卿なんだ」

 鎧の中に誰が乗っているかも知らず…彼らは信じる、先ほどのザノンの名乗った偽りの名を。

 そこに、クロウス・アーメイという偶像があるのだと信じさせるに十分な力をアイギスは持っていると、ザノンは感じた。



 「クロウス卿です!クロウス卿が我々と一緒に戦ってくれています!」

 興奮した騎士の通信を聞いて、ペインは胸に刺すような痛みが走るのを感じる。

 咳が、ペインの胸から思わず漏れる。

 ペインが、思うところあってか、通信を各員に発する。

 「クロウス…逆賊でありながら、その罪をうやむやにしようとでも言うか…」

 エクスが、ペインの声になにか…異物のようなものが混じったと、違和感を覚える。
 「ペイン・オールトー…?」

 エクスが呼んだその名に、ペインは答えなかった。

 「勝てば、許されるのか。罪は。
罪びとも誇り高き騎士も同列であるか。
人間ども…」

 咳をもう一つして、ペインはうわごとの様に呟く。

ぞわり、とその声を聞いたエクスの肌が総毛立つ。
エクスは、その声にある確信を抱いたのだ。

 「…おい!ペイン!ペイン・オールトー…!そっちにいくんじゃない!」

 「…」

 ペインの声の代わり…湿った、ごぼり、という物音がエクスの耳に返ってくる。

 エクスはペインがもういない事を、ある経験から察知した。

 「…畜生!…盾の騎士団!ペイン機の周りから離れろッ!」

 敵の中にあって、何事が起ったかと、ペインの周辺の機体の足が止まる。

 ペイン機の右手側、剣を持っていた側に立って…ペイン機に向き直った
ノーブル・アーマー、ダィンスレー二番機のコクピットを、ペインの剣が深々と刺し貫いた。