011.X XS:4_marici





「来たな!メーテ・マリシン!」

 砂塵と噴煙の渦巻く戦場の彼方に屹立する禍ノ神を思わせる、不吉なシルエットを認めると、
相対するウォーリアの一体を手にした二刀で鮮やかに切り伏せて、
エクスがデアブロウの顔をそちらに向けさせる。

その禍ノ神の如し姿を持つメーテの魔装鎧、【バジユラー・オーガ】は、
遥かな遠方で、遠目にも判る異様なシルエットから伸びる砲塔を揺らして、
空中の、ハーピー・タイプの一体を狙い撃ち、
ハーピーは轟音とともに浴びたメーテの対空砲の一撃でばらばらに解体される。

 ゴールデン・コヨーテ、メーテ班の指揮官機にして、
ゴールデン・コヨーテの運用する全ての機体の中でも、
段違いの遠距離攻撃能力を持つのが、メーテ・マリシンの操る
バジユラーのカスタム機であり、
両肩に大型対空砲二門、背部と腰部に二連装対地砲を合計四門と、
手持ち武器にデアブロウも使用する大型実弾ライフル【ドルガノウ】を装備。
─但し、これはデアブロウのものよりもさらに殺傷能力を高く、ピーキーに改造されている。
各所に大型機関砲を備え、脚部に
マジックミサイル発射口六門を持つその、要塞のような魔装鎧の機動性能は
著しく劣悪であると評価されている──。

カスタムされていない仕様のバジユラーが
そこそこの近距離戦闘能力を持つのに比較して、
メーテの駆るこのカスタム機の【オーガ】に関しては
近距離戦闘能力に関しては、ゼロと断言していい。

もともとの機体サイズが中型としても大きい上に、
追加武装を山ほど施されているものだから、
旋回すらクワィケンの三倍強の時間がかかる機体であるが、
装甲の厚さと火力は凄まじく、拠点防衛など、運用方法によっては、
十倍強の中型ルサンチマンを圧倒する事すら可能である。

 「盾の騎士団!エクス班!
メーテ班が前進しながら支援する─
いやさ、しているがな!」

 メーテ班の独自の改装の施されたクワィケンが、前進しながら火線を作り、
乱戦に次々と割って入っていく。

メーテの乱入を察したのか、今や前衛にその姿を表したニュクス・タイプの一体が
メーテに怨霊砲を放とうと触手を束にしてメーテ班の方へと伸ばす。
触手に黒い靄のようなものがかかり、大気にまで影響を及ぼしているのか、
その、束になった触手の周囲の大気がぐらりと歪んだのがデアブロウで前進するエクスの目にも見て取れた。

その気配をメーテも察して、ニタリと笑う。

 「一、ニ、三と、三歩─じゃちょっと多いか?まぁ多くて損するものじゃない」

 メーテがバジユラーを重い足取りで三歩、横飛びに跳ねさせる。地響きが鳴動すると共に、今先刻まで
バジユラーのいた辺りを怨霊砲が空気を焼いて行き過ぎる。

 「避けれる機体じゃないだろう、メーテ・マリシン!」

 エクスが笑う。

 デアブロウが口を開くように、
先ず下顎を下に展開させ、
それから頭部を上に押し上げて、
顔の中に隠れていたパラボラ・アンテナのような形状の
砲塔が姿を表す。
ついでデアブロウは両肩に背負った蝙蝠の翼のような形状の
展開式の盾を左右両方展開させ、地に片膝をついて敵の反撃に備える。

 「ルサンチマンを、撃つッ!」

 マスクをグイと引き下げたエクスが丸薬を口に放り込んで、
フリッツヘルムを目深に被り、丸薬を噛み砕いた。
丸薬を噛み砕くと同時にエクスは左手のレバーを引き、
立て続けに、右手側に複数設置されている
レバーの一本を前に押し出す。
 急激に、デアブロウ頭部の砲塔前面に光が集まり、
収束していく。
光が集まって、収束した部分は、白く世界を塗り潰しているかのように、強烈な閃光で殆ど何も見えなくなっている。
収束したその光は巨大な光の矢となって、ニュクスに殺到していた。
空間を走りながら、圧縮されていた物質が展開するように光の矢はその末端から急速に展開を始め、
見る間にデアブロウの身の丈を超える全幅に広がりを見せていた。

 オクトパスのものより、大分規模は小さく、
ジェネレータも小さい為にチャージにも時間がかかるが
魔装鎧に強大な攻撃魔法、
バニシングレイを使わせる事を可能にすることによって生じる
メリットは甚大である。
機動性に劣り、発射する場所を詳細に選べない支援車両と比べて、
最適なポジショニングをすることが出来る、
同じように、不足する威力と精度を、機動性を活かして肉薄する事で補う事が出来る。
 光の矢は、触手を解いて構えを作ろうとした
ニュクスの動きよりも早く、ニュクスを貫いて
通り過ぎるところにあるもの全てを死滅させる死の閃光は、
一ツ所に纏まっていたニュクスの触手をばらばらに吹き飛ばし、
丸々と太った巨大な胴体を三分の一ほど削り取る。

 一瞬で、身体の半分を失ったニュクスは
それでもまだそれが理解出来ないように身体をぶるぶると震わせ、
その、削り取られた肉の断面を蠢かせる。

 「未練ッたらしいぜ、ラビア野郎!」

 ヒャヒャッ、と低いしゃがれ声を歪ませてメーテが笑うとその嘲笑は、
バジユラーの銃弾、砲弾の雨霰となってもう一瞬にニュクス・タイプを穴だらけにしている。

 その銃砲の巻き上げる土煙を超えて、アイギスが三次元戦闘モードを使って、
ニュクスを飛び越えるように飛翔する。
 「接近戦武器の出力を上げて、大型を、倒しますッ!」

 先ほどよりは緩やかに、出力を上げることを求めたザノンの願いをアイギスのシステムは、今度は拒まなかった。

 天高く─自らの頭上高くまで飛翔したアイギスを認めたニュクス・タイプの
一体は触手をばらと解き、構えを作るように己の周囲、全方位に伸ばす。
と、思えば数え切れないほどの触手は、もう空中のアイギスを打たんと風を切って殺到し
空中でそれを了解したザノンは先ず、太刀を払ってアイギスの足元から伸び上がってきた触手の一本を叩ッ斬ると、
その太い触手を蹴り飛ばして、他の触手にぶつける。
息つく間もなく、今度は左手側の触手を刀でもって斬りつけると、アイギスはキリがないと
言わんばかりにさらに上昇して、その高度を上げる。
それを追って伸びる二本の触手は矢張り、纏めてアイギスの太刀に叩ッ斬られ、
魔装鎧にも匹敵する幅のそれはゆっくりと地面に墜落していく。

 「触手の中央に突っ込んで、相手の攻撃を抑えようにも…」

 どおんという、叩き落した触手が他の触手に衝突する地鳴りのような音を耳に入れながらも、
ザノンは唾を飲み込んで、真下のニュクス・タイプのイソギンチャクのような巨大なシルエットを見下ろす。

 身じろぎをした瞬間に走る肋骨の痛みに、ザノンは、うッと声を上げる。
汗で湿った指先を、操作用のフィンガーパネルの上で跳ねさせて短く息を吐く。
 「突破、出来るのか?この状態で…」
 そう、ニュクスに接近戦を仕掛けるのであれば、網の目のように張り巡らされる触手の攻撃をかいくぐって、
触手の根元まで辿り着かなければならない。

 「支援砲撃も集中してるんだ、
俺の進入方向にあわせろ、クロウス・アーメイとエクスカリバー!いや、アイギス!」

 エクスの声を聞いて、そうか、とザノンは
空中でアイギスの機体を旋回させて、眼下にデアブロウを捉える。

 エクスが、ニュクスタイプのほうに接近しているのであれば、
ニュクスの触手を何本も相手にしている筈だし、単独でそれらを相手にするよりも
接近はしやすくなる。
 「フラ・ベルジャ各機におかれては、
最北のニュクスタイプの触手を出来る限り牽制して頂きたい!
中型、小型の相手も骨だろうが、頼るぞ、盾の騎士団!」

 エクスの通信が飛ぶと同時に、マツカブイの椀部のガトリング砲が唸りを上げて無数の薬莢を吐き散らす。

 「グレン卿、助太刀をさせてもらう!」

 雷の様な怒声でマルコが叫び、マルコの狙ったルサンチマンDiesは跳躍を繰り返して
ガトリング砲の巻き上げる土煙を避けると、大きく横に跳ねて、その著しく巨大な口から魔法を放つ。
爆発音のような巨大な音を立てて、先ほどと同じように、柱のような土煙が上がる。
辛うじて直撃は免れたものの、その衝撃を椀部に受けたマルコのマツカブイは、
ガトリング砲を装備した椀部を引きちぎられてしまい、大きく後部に弾き飛ばされる。
 しかし、ルサンチマンが注意をそちらにそれたのを見逃すグレンではない。

 マツカブイへの追撃を許さず、ダィンスレーRは
今の一瞬の出来事の間にDiesへの格闘線距離への接近を成功させていた。

 ダィンスレーRの直線を描いて伸びる鉄拳が、Diesの頭部をバシャンと音をさせて打つ。
Diesの舌の一枚が、鋭い自らの牙に切り裂かれて空中にちぎれ飛ぶ。
雷光を思わせる速さを持つダィンスレーRの拳が戻るよりも早く、
ダィンスレーRは腰を返して反対側の右拳でDiesの脇腹を捉えていた。

防御を捨てて、拳に攻撃と防御の為のエネルギーをほぼ全て集めた
特殊な状態となったダィンスレーRの一撃は強烈である。
Diesに連撃を加えたダィンスレーRは返した腰を戻すように
右足の位置を戻し、大地を踏んだ右足はずしんと地面を震わせる。

 Diesの腰から伸びた無数の触手の攻撃を、立てるように構えた左椀部を円を描くように
運動させ難なくいなすと、ダィンスレーRの左椀部はその動きから連続して手刀をDiesの首筋に食い込ませ
立て続けに前蹴りを触手の中央、下腹部にめり込ませ触手を圧し潰す。

 Diesの背中の関節肢がグレンを捉えようと動きを見せるが、
その時にはもう戻していたダィンスレーRの右足が今度は下段回し蹴りでDiesの左膝を捉えていた。

 右足を上げたまま、膝から先をぶら下げるような構えに
戻すとダィンスレーRは今度は、中段、上段とニ発の蹴りでDiesを打ち据える。

 瞬く間に七連撃。
斧を杖に立ち上がったマツカブイの中のマルコは、グレンの演武のような連続攻撃に心を奪われる。
 「劣化ダィンスレーだというが───それでも丸腰で押し切れるようなものなのか!?」

 怯んだDiesはしかし、それだけで倒れる気配も
見せずに蹴り足が戻る時にはもう右手の、剣だった物を突き出して、なぎ払っていた。

 ダィンスレーRはこれをかがんで回避すると、
右足の踏み込みと同時に上段へ突き上げるような拳の一撃を見舞おうと構えを作るが…

 しまった、近い。

 グレンが相手から間合いを離すべきであると、はっと気付いた瞬間には
浮かせたダィンスレーの右足がバキンと異質な音を立てていた。

気配を見せずに、Diesの関節肢は、その鉱物の持つ硬さを持ってして、
突きの挙動でダィンスレーRの右足を貫いていたたのだ。

 グレンともあろう者がこのような過ちを犯してしまうのは第一に
相対したDiesが誰も戦った事のない性質のものであることから、
その能力を測りかねていたのと─
彼自身に、焦燥のようなものがあったからなのかもしれない。
そう、ペインがこの世ならぬものに取り込まれ、それのみならず
決して人間であれば言葉にできない心の内を言葉にした、
直視できない無残な結末を葬り去りたいという気の逸り。

 脚を貫かれ、回避が不可能になったグレンのダィンスレーRに、Diesの剣が突き込まれる。

 間一髪、グレンはダィンスレーRの左腕を間にねじ込んで、
ダィンスレーRは胴体─ジェネレータへのダメージを逃れるが、剣は火花散らしダィンスレーRの左腕を貫き、
ダィンスレーRとグレンは自由を奪われる。

 「死ねばいいのニ」

 ぐい、と剣を手繰り寄せるように強い力で引くと、Diesの首が長さを変えて僅かに伸びる。

眼を失った顔が、ダィンスレーRを、その胎内のグレンを覗き込むように顔を近づける。

 躊躇なく、Diesはその口と舌とを動かして呪いの言葉を吐き捨てる。

 「死ね
死ね
死ね
死ね
何度でも殺すから、
何度でも死ね
殺意で、
お前を、
呪う、
存在を呪う。
灼き尽くす
お前の存在
過去、現在、未来、全て、呪う。
妬みと嫉みに答えて死ね」


 凄まじい怨念を乗せた言葉を切ると、Diesはその口を一際大きく開く。

 リッパー。

 グレンは、先ほどの土煙を思い返してダィンスレーRの腕を失っても、逃れなければ、とペダルを踏み込む。

 しかし、Diesは、ダィンスレーであった
サイズに見合わない─ウォーリアに匹敵するか、それ以上の膂力を発揮し、その腕と同化した剣を微動だにさせない。

 マルコは片腕となったマツカブイで馳せ参じようと、
マツカブイを走らせるが、その途上をウォーリアとジョーズ・アーミーに阻まれる。
邪魔だとマルコは叫んで、胴体の小型機関砲を撃ちまくるが、
小型はともかく中型にはやはり有効なダメージとはなりえず、
マツカブイは横飛びに迂回を余儀なくされる。

 ばしゅッ、と音を立ててメーテが革で出来た防護服の袖にマッチを擦り付け、火を灯す。

 口の左端に咥えた煙草に火をつけると、メーテはハハッと短く笑う。

 暗いコクピットの中でメーテの双眸に炎が映ってギラリと光を放つ。
 交戦中に吸引するという事は、エクスの丸薬と同じく、単なる煙草ではないだろうが─

 「人を呪わば穴二ツってのは、いい言葉だよなァ?
…頭ン中まで響くでっけえ声で死ね死ね言ってるんじゃあねえよ。
プロは、言葉で構えを見せる時にはもう殺してるモンだ。
そら、てめえの掘った穴ボコが丸見えだぜ!」

 バジユラーのライフルが吠える。

空間を焼き切る亜音速の弾丸はまず、Diesの右肩を砕き、
次弾は関節肢を真ッ二つに叩き折った。

 グレンを捉えたことで、Diesの脚も止まったのだ。
脚を使って跳ね回るDiesもその状況でアウトレンジから狙い撃たれては溜まらない。
ギャアと喚き声を上げて、Diesはその場を飛びのく。

 「命を拾ったぞ!ゴールデンコヨーテ!」

 グレンもまだ脚部が生きている事を確かめてDiesと間合いを離すべく飛びのく。

 「また、だらしのねえのを拾っちまッたモンだな、
そんなのでよけりゃとっときなよ、騎士様」

 笑っているのか、震えるメーテの声を聞きながらもしかし、
グレンは自分の情けない始末を思って返す言葉もない。

 「気を抜くなよ、お次がくるぜ!こいつだって
怨霊砲で狙われたら回避で手一杯になるんだ!当てにしてくれるんじゃねえぜ!」



 残る大型規格のルサンチマンの数は9。
メーテや、支援車両の砲撃があったとして、
それらをどうやりくりしたとしてもどう足掻いても接近戦武器で
仕留めるしかないものが出てくるのは自明の理であるが。
 「スレイプニル!暫定指揮官殿!もうちょっと精度は出ないのか!
砲弾を防御されるならされるで!」
 すんでのところを味方の砲撃に巻き込まれそうになって、飛びのいて難を逃れたエクスが叫ぶ。

 「こいつは本来、防御フィールド構築用の車両だし、砲弾は実弾なんです!
やろうと思って攻撃面のパフォーマンスをあげられるわけはない!」

 「聞いただけだよッ!」

 地を蹴って全力疾走するデアブロウを狙って、
ニュクスの巨大な触手の雨霰が鉄槌となってデアブロウの頭上から降り注ぐ。

 走り、飛び、小回りの効かないデアブロウで
辛くも鉄槌の雨を避けると、エクスの行く手にウォーリアが立ちはだかる。
それを了解したエクスのデアブロウの脚は僅かに鈍るが、
エクスは尚立ち止まらずにデアブロウの左足を軸に
背中をウォーリアに見せるように機体を最速で旋回させ、
その勢いで左へと立ち位置をシフトする。
立ち位置を変えたデアブロウは僅かに真横に蟹のように横歩きし─
ばぁんと地面を揺らして、狙いを外されたニュクスの触手が地面を抉り取って大穴をあけた。
長大な触手の一撃の巻き添えを食らって
フラ・ベルジャが一体、ばらばらになって吹き飛ぶのをエクスの眼は捉える。
折りたたまれたデアブロウの展開式の盾を、背部機構が切り離すと、
デアブロウは今度は柱のような触手と、盾との間を機体を旋回させ、
一瞬空中に浮いた盾に隠れるように、一気に盾の横を抜けてウォーリアに詰め寄る。

 ヒョウッと奇声一叫、エクスと一体となった
デアブロウはまず右手の太刀でウォーリアの左脇腹から右肩にかけて逆袈裟に斬りつける。
胴体を両断するような一撃にウォーリアが身体を揺らす間もなく、
反対側の手の刀は
バツンという筋肉にくの収束を断つおぞましい音と共に
ウォーリアを左の首筋からから右の腰にかけて、深々と切り裂いていた。

 「ハハッ、デアブロウでぶっつけ本番の接近戦とはいえ、何とかするってもんだ!」

 エクスの頭上を飛び超えて、アイギスが両手の二刀を閃かせる。

 「さらに道を開く!」

 ザノンはアイギスの刀をニュクスの胴体に突き立てると
三次元先頭モードに力を借りた加速と、
旋回能力で触手の周囲を一周廻るようにして、触手を切り落とす。

 真下に俺がいるんだぞ、とエクスは叫んで、デアブロウは跳躍し、
器用にも崩落する足場を踏み台に更に高く飛ぶ。

 「道を開くと云ったじゃないですか?エクス・ノアさんなら何とかしますよ」

 「言うね、僕ちゃんがさぁ!」

 エクスはデアブロウの
巨大な爪を更に別の触手に突き立て、
脚を突っ張るようにしてデアブロウの姿勢を制御させ
ザノンは片手片足の塞がったデアブロウを守るように両手を広げて
空中で構えを作る。
 「そら、クロウス卿、
ラビア野郎の城壁だぜ。
ジェネレータのエネルギーを使いきっちまうなよ?

…その機体はバカみたいにあるだろうから、
使い切るほうが難しいだろうがな」

 デアブロウが顎を動かして、空いた手の指先で指差して示した触手の根元には、
確かにニュクスタイプの胴体と思しき
巨大な赤紫の襞のような肉壁が蠢いている。

 「もたもたやってると的にしちゃうんだぜ」

 メーテが抑揚のない声でエクスとザノンの二人に
通信を送るとシャッヒャと笑う。

 「おっと、こりゃ失礼」

 メーテが笑いを止めて眼を細めると、バジユラーは先ほどと同じように僅かに右へ動いて
ウォーリアのエナジーボルトをやり過ごし、遠方のウォーリアにライフルを照準する。
 が、弾丸軌道には盾の騎士団のフラ・ベルジャがウォーリアと相対して立ち塞がっている。

 「ちぇッ、ぐるぐる廻ってお見合いしてるんじゃねえよ。
─ロングレンジモードでマジックミサイル起動
照準合わせて軌道を指定。」

 ウォーリアだからなぁ、
マジックミサイルのロングレンジじゃ避けるんだよなぁと
メーテは呟いてトリガーを引く。
バジユラー脚部からドン、という轟音を発して、
閃光が走る
光の矢は途中で軌道を変え大きな弧を描くようにウォーリア目掛けて殺到する。

 「バジユラー・オーガじゃマジックミサイルはこれで打ち止め〜
あーあ、無駄撃ちしちゃったぜ」
 実弾に比べ、遥かに遅いがマジックミサイルには軌道を変えられる特性がある。
放たれた六発の光弾はまず、最初にウォーリアがたっていた辺りに着弾する。
遠方からその挙動を見ていたウォーリアは
タイミングを合わせてこれを地面に着弾させるが直ぐに前方に跳躍する。
一拍遅らせて、着地点を別のマジックミサイルが狙って殺到して来たのだ。
コクピットの中のメーテはそれをチラリとだけ見ると、
顎を縁取る無精ひげの一本を摘んで指先で弄ぶと煙草の煙を吹かして、
グレンとマルコ、それにDiesの動向などに眼をやる。

 続けざま、光の矢はそのことごとくが
ウォーリアの着地地点を間一髪外して地面に着弾する。

回避に全力を傾け、ウォーリアが最後に飛び降りたのは、
最初に相対していたフラ・ベルジャの前だった。

 メーテはそちらに視線も傾けずに、パン、パンと拍手を鳴らす。

 剣を構えて待ち受けていたフラ・ベルジャは
惑うことなくウォーリアの腹に強烈な一刀を見舞い、
次いで跳躍して、ウォーリアの頭頂から剣を食い込ませ、地に脚を着ける。
フラ・ベルジャが踏ん張るように脚に
力を込めると登頂に食い込んだ剣は、
ゆっくりとウォーリアの頭を両断し、首、次いで胸元まで下がっていく。

 「はい、はい、おめでとう、おめでとう─
おぉい、ところでだな。ナイトガルド、盾の騎士団。
えーっと、識別によると
お前らの偉大な騎士グレン様が虫の息みたいなんだが、
そう何度も手出ししたら、騎士様ぶすくれるかネエ?」